意識の国際比較調査

文化多様体解析CULMAN

戦争の統計から平和の統計へ

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統計数理研究所から眺める富士山
統計数理研究所は、戦時下の学術研究会議の建議に基づき文部大臣の管理下に「確率に関する数理及びその応用の研究を掌り並びにその研究の連絡、統一及び促進を図ること」として、1944年に設立されました。戦略研究機関であったため、当然、戦後の占領下では廃止されると思われましたが、Rice統計使節団の勧告もあり、日本復興のために政府統計の整備や戦後民主主義の発展のための「科学的世論調査」の方法論の確立という新たな使命を帯びて発展していくことになりました。今日の日本の官民学の統計調査や解析のシステムは、統計数理研究所の所員たちの指導の下で各分野の専門家たちの共同研究として確立したものが多い。昭和20年代の統計学は、国の復興という大義の下で、優れた人材が集合し、優れた統計調査のシステムが創造されていった時代でした。

日本語を救った統計調査

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自由市場が発展する中で儒教の伝統も残るベトナム (卒業記念写真撮影会)
戦後、日本人は難解な漢字を用いているために十分な学力がなく一部の軍国主義的リーダーに盲目的に従い戦争に突入したと考える米国政府の一部が主張する「日本語のローマ字化」に対し、統計数理研究所を中心として大規模な統計的無作為標本抽出法が実践的に開発され、1948年に「日本人の読み書き能力調査」が遂行されました。その結果、民主主義の発展に十分な日本人の学力を確認し、日本語を救ったと言われます。この際に開発された科学的世論調査が戦後民主主義の発展の動力となり、またその方法に基づき1953年には「日本人の国民性」調査が開始されました。これは、今日では半世紀以上にわたる継続調査となり、各時代の日本人の意識や価値観を浮き彫りにしてきました。これは文部省をはじめ官民学の支援を得て発展してきた日本の独創であり、その後、米国のGSSやWVS、ドイツのALLBUS、欧州のEVSなど、世界各国が同様の一般社会調査を展開していく先駆けとなったのです。

意識の国際比較調査の展開

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多民族・多言語・多宗教のインド(イスラム寺院)
この研究は、1971年頃から、国民性をより深く考察する目的で日本以外に住む日本人・日系人を初め、他の国の人々との比較調査へ拡張されてきました。単純な統計数字の大小比較ではなく、異なる文化や言語を越えた国際比較可能性を追求する「連鎖的比較方法論 Cultural Linkage Analysis(CLA)」を開発し、さらに国際比較に空間、時間、調査項目の比較の連鎖に階層構造を導入し「文化多様体解析 Cultural Manifold Analysis (CULMAN)」と称するパラダイムを発展させています。近年では特にアジアに目を向け、2010-2014年度は科学研究費・基盤研究Sによる「アジア・太平洋価値観国際比較」を現在遂行しています。 科研費概要

主な意識の国際比較調査と調査チーム

1971年のハワイ日系人調査を端緒として、ブラジルやアメリカ西海岸の日系人調査を含み、東アジア、環太平洋、インド・アジア太平洋地域の諸国の人々の意識や価値観を統計的無作為標本抽出法に基づき調査し、解析を展開してきました。刊行した論文・文献の紹介や集計表など、さまざまな情報を本サイトにて公開しています。